みなさんは、象牙についてどれくらいご存知でしょうか。今回は、日本の象牙販売の実態に迫ってみたいと思います。象牙と聞くとみなさんは、何を思い浮かべますか? おそらくほとんどの人は『印鑑』を思い浮かべるのではないでしょうか。日本において象牙は、主に印鑑の材料として使われていますね。しかしそこには、密猟などの問題が隠されていたのです。

日本の象牙買取と密猟

みなさんは、象牙が何という種類の象からできているかご存知ですか? 答えは、アフリカゾウです。みなさんもきっと聞き馴染みがあると思います。実は、象牙欲しさにこのアフリカゾウが密猟され、絶滅の危機に瀕しているのです。

みなさんもアフリカゾウといえば、アフリカのサバンナを優雅に歩いている群れの姿を想像できると思います。まさにサファリの象徴とも言える存在ですよね。しかしそんなアフリカゾウも10年~15年の間でこの地球上から消えてしまうと言われているのです。

本来、象牙というのは、アフリカゾウにとって自分の身を守るために得たもの。それなのに、アフリカ全土で行われる大規模密猟のせいで、アフリカゾウにとって自分たちの命を失わせる存在となってしまいました。

アフリカゾウ絶滅のきっかけを作ったのは日本?

あまり知られていないかもしれませんが、アフリカゾウ絶滅のきっかけを作ったのは、他でもない我々日本だということをご存知でしょうか。2000年に行われた日本企業の合法的な象牙購入。

しかしそれ以前にも、アフリカゾウ密猟はあったのです。1980年代には、象牙やトロフィーハンティングの影響により、アフリカゾウ全体のおよそ半分である72万頭が殺戮されたのです。さらに当時、全世界の象牙消費40%を占めていたのが、他でもない日本です。

まさに象牙大国と呼ぶに相応しい日本。70年代以前まで象牙は、印鑑の先端部分に使う材料として使われていました。しかし70年代以降になって、印鑑全体が象牙になっているものが好まれたのです。これがアフリカゾウを絶滅へと追い込む大きな原因になったと言われています。

全世界で象牙販売禁止へ

80年代までアフリカゾウは、ワシントン条約会議で『附属書Ⅱ』に載っていました。附属書Ⅱに掲載されている動物というのは、国際取引で国同士の取引を制限しなければ、近い将来絶滅の危険性が上がるとされていました。そのため、象牙を輸出することはできても、輸出国の政府が発行する許可証が必要でした。

しかしそこに追い打ちをかけるように日本での象牙需要が上がります。すると現地での密猟がさらに増え始めたのです。しかしその状況を見て黙っていなかったのが国際保護団体。彼らのアピールにより、89年にワシントン条約会議で附属書の見直しがされることに。

その結果アフリカゾウは、附属書Ⅱから附属書Ⅰに移ったのです。附属書Ⅰは、現状すでに絶滅の危機に瀕している生き物が掲載されます。附属書Ⅰに掲載された場合、商業目的とした輸出入が禁止されます。結果、象牙は全世界で販売禁止になったのです。

これによりアフリカゾウは、絶滅の危機から救われたかのように見えました。しかし……

2000年に再び悪夢が訪れる

97年のワシントン条約会議によって、ボツワナ、ナミビア、ジンバブエの南部アフリカ諸国からの象牙が附属書Ⅱに戻されたのです。そして2000年には、流通・販売実験の名目で日本にのみ約50トンの合法象牙買取が許可されました。この時の買取価格は500万米ドル。日本円にしておよそ5億2千万円。

この合法象牙流出をきっかけとして、象牙密猟者をはじめ消費者に象牙ビジネスが再開したと勘違いさせてしまったのです。2006年には、南アフリカ、ボツワナ、ナミビア、ジンバブエの象牙60トンが日本にのみ取引許可されました。

2008年には、一回限りの販売として、中国と日本が108トンもの象牙を買取しました。

現在売られている象牙は密猟で得たもの?

現在日本で手に入る象牙は、密猟で得たものではありません。合法象牙として買い取ったものをきちんとした在庫管理のもと、販売を行なっています。仕入れた日付や販売した日付などの記録も義務付けられています。

つまり現在ある在庫がすべてなくなれば、次第に日本の印鑑屋から象牙の印鑑は消えていく運命にあるのです。しかしその分希少性が高く価値も高い素材となっています。

象牙の買取価格

象牙の買取価格に関しては、一本物だと『重量×重さ』によって決まります。重くなればなるほど、1キロあたりの単価は上がっていきます。もちろん彫刻や細工がされているかどうか、彫りや象牙の状態、作家の知名度などによっても買取価格は変動します。重量が3kg~5kg未満の場合は、1kgあたりの単価が20,000円になります。もし買取に出すのが、4.8kgだと『4.8×20,000』になり、96,000円が買取価格になります。

35kg~40kg未満の場合は、1kgあたり46,000円の単価になります。39.8kgだと、1,830,800円の買取価格というわけです。

希少性の高い象牙は、今後も価値が上がるかもしれません。しかし我々人間のエゴで動物が密猟・殺戮されることのないように願うばかりです。